サラームカフィ公式ブログ〜WEB自家焙煎教室〜

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「サラームカフィのプロも知らない美味しい珈琲の淹れ方〜珈琲はマヨネーズ電池〜」無料公開

サラームカフィのプロも知らない美味しい珈琲の淹れ方〜珈琲はマヨネーズ電池〜』を無料で公開いたします!

 

※もちろん皆様のお店でこれらの抽出法を使われてもサラームカフィ式○○抽出法と表示しないでも一言の断りもなくてもお使い頂けます!調理法に特許権は無いので大丈夫ですよ!また  3部作完結編として焙煎機製作編も公開しております

salemkaffee.hatenablog.com

 

 

サラームカフィのプロも知らない美味しい珈琲の淹れ方〜珈琲はマヨネーズ電池〜

 

第1版 2021/12/11 第2版 2022/11/08発表

 

  目次

 

0 序文

1 珈琲抽出の3要素

2 豆の扱い

3 茶器と金属イオン

4 食べ合わせ

5 浅煎り浸漬式珈琲一考

6 私の珈琲の淹れ方

7 おすすめ器具

8 後書き

 

0 序文

 

本書では喫茶向けを中心にご自宅用にも応用できる独自の美味しい抽出法をご紹介します。

本書では独自の仮説として

1 金属イオンは珈琲の味に非常に大きな影響を与える。

2 抽出法は限界ミセル濃度に到達することを隠れた目的としている。

3 1と2の理由により抽出器具の形状及び材質が珈琲の味に非常に大きな影響を与える。  

 

  以上の事を主張します。

 

本書は2万字程度の小著ではありますが今までにない観点から珈琲抽出を論じた本です、とはいえ私は味に正解があるとは思っていません、人間の味覚にはかなり多様性があり苦味を感じない味盲(フェニルチオカルバミドの苦味を感じることができないこと​​)の人や個人的な経験上珈琲の生焼けの渋みを感じない人たちも一定数います、また国や地域によっても味の好みはかなり異なり、美味しさに「正解」というものはなくお客様が求めるものが正解としか言いようがないと思います、ですが美味しい珈琲抽出に法則とパターンが有るのも事実です、本書が皆様の珈琲作りの一助となれば幸いです。

 

※本書の著作権に違反する複製再配布及び出典を記さない引用を禁止します。




1 珈琲抽出の三要素

 

 抽出において大切なのは次の要素です

 

お湯   ①金属イオンと硬度 ②水素イオン指数 ③温度

 

乳化   ①限界ミセル濃度  ②表面積     ③布乳化

 

浸透圧  ①透過法      ②浸漬法     ③水量と粒度 

 

・お湯

 

 珈琲抽出で最も重要なのは水ですがその要素の中でも金属イオン、つまり日本食で言う金気(かなけ)の影響は絶大です、特に水道の配管部品や器具に銅や真鍮(銅と亜鉛の合金、黄銅)製品が使われていないかに注意してください、

 

銅の金属イオンは珈琲やお茶のふくよかな味の広がりを一瞬で破壊してしまいます、水道部品の素材は銅製の配管部品も多いのでしっかりとを確認しなくてはいけません、

特に整流網やキャップと呼ばれるほとんどの蛇口についている部品が黄銅製であることが非常に多いので注意してください

 

これはお茶、紅茶、ワイン、日本酒、果物(イチゴなども洗うときに銅イオンと触れると途端に香りがなくなる)も同じで、硫黄系などの香り成分と銅が反応すると一瞬で香りが消えてしまいます、配管に銅が使われているエスプレッソは香りが出にくいのもそのせいでしょう。

(それに加えてヨーロッパは水道管が銅製であることが多いのでお茶がまずいのでしょう)

 

また同じ理由で銅、真鍮(黄銅)の部品や銅管が使われている給湯器、瞬間湯沸器のお湯は早く沸騰させられるとしても絶対に使ってはいけませんし、そういう水で茶器を洗うのも控えるべきであり、温水と冷水がどちらも出る蛇口で温水側に取手を向けて水をくむのも温水の水道管から銅イオン入りの水が入り込むため絶対にだめです、さらに一度でも銅を含んだ水が蛇口や湯沸かし道具や浄水器に入り込むと水を流してもなかなか味がもとに戻りません、そのため温水が出る蛇口からは水をくむべきでは有りません、また食器洗い機にも真鍮製部品が多いので要注意で、理想としては湯沸かし器から完全に独立した取水専用の蛇口があれば最高です。




お湯を沸かす時にはアルマイトや銅のヤカンをつかう人が多いと思いますが、実は珈琲を(緑茶にも紅茶にもですが)淹れるには向きません。なぜならどちらも容器の金属イオンが溶出して味を悪くするためです、多くの名店はホーローポットを使います、ホーローもメーカーや釉薬の色によって味が全く違うので味の面から言えば、内側まで白い野田ホーローの器具を使うのがオススメです(最近は内側を傷の目立たない濃い色にした製品が多いので鍋くらいしかないですが)

 

また、朝一番の水は赤錆の影響なのか味が悪いので、すこし出しっぱなしにしてから汲みます、さらに夏は塩素の添加量が増えるのでお湯を沸かす時間を長くするように注意してください。

次に見落としがちなのは家庭用浄水器のフィルターにカビ防止用に入っている銀粒子です、衛生的で素晴らしい技術だと思いますが、これも恐らく珈琲の味に影響を与えているはずです、私は家庭用浄水器でも塩素を除去したほうがプラス面が大きいと思いますがこのことは頭の隅に置いておいてください、理想的には蛇口直結式でイオン交換樹脂と逆浸透膜付きの浄水器を使うと良いでしょう。

 

次に水素イオン指数つまりpHです、沸騰したてのお湯は弱アルカリ性ですが沸騰するとpHは上昇していきます(アルカリ性になる)これは水中の二酸化炭素が抜けるためで、炭酸水の二酸化炭素が抜けると酸味がなくなるのと同じです。

 

長く温め続けたお湯はアルカリ性の強い渋い味になってしまい珈琲にもお茶にも向きません

世界最古の茶の本である「茶経」にも沸かしすぎた湯は味が悪いので使わないようにと書いてあります、実際に温め続けたお湯をのむと渋い味がします。

 

珈琲用のお湯は空気が逃げないように蓋をして沸かした、くみたて、沸かしたてのお湯を使わなくてはいけません、また味の他に香りもpHに大きく影響を受ける可能性があります、

珈琲の香り成分の酸化速度とpHは密接に関係しており、pH 5を境に香りが弱くなるという研究があります(飲料フレーバーに関する食品科学的研究 熊沢賢二 2011)珈琲抽出液自体は焙煎度にもよりますがだいたいpH5~6程度の弱酸性です、ちなみに炭酸水を沸かしたものを使うとpHが低く抑えられるためなのかわかりませんが香り、特に口に入れたときの含み香Flavor(口の中から鼻に抜ける香り)よりも上立ち香Aroma(カップから立ち上る香り)と返り香(喉から鼻に抜ける香り)After tasteが強くなります、炭酸水を使う場合酸味が出過ぎないようご注意ください。

 

硬度については一般的には珈琲に適した水は軟水、深煎りでは硬水と言われていますが、個人的にはどちらも軟水、特に純水に近いほど優れているように感じました。




もちろん最後に忘れてはならないのは温度です、多くの人が深煎りか浅煎り以外の焙煎で83-85℃で入れるのが良いとするのは、それ以下だと抽出効率が悪く、それ以上だと次項で説明する乳化が解除される温度である曇点(どんてん)を超えてしまうからです、恐らく主要な成分である乳化脂肪酸エステル類の乳化能力は80℃程度が最高なので珈琲粉の中がこの温度帯になっているのが理想です。

 

一般の透過法で計測するのはあくまでドリップポットの中の水温なので粉と触れているお湯の温度が重要 であることに注意してください、ポットの中の水温、そそぎ口の中、珈琲粉に触れたとき、抽出中の粉の中と順々に低下してしまいます、特に細首のポットはつる首を通る間に急速に冷えてしまいます、また体積の大きい粗挽きでは粉が温まりにくい事も計算しましょう。

 

お湯の温度は83℃、深煎り(本書では2ハゼ以降で油がテカり1週間以上熟成が必要なほど煎った場合とします)では63℃、浅煎りでは90℃以上がオススメです、前述のように乳化作用の有る脂肪酸などのエステル類は乳化力があるのが80℃までなので、粉に取られる熱を考慮して乳化力を最大限にするためには一杯分淹れるときは83℃が最良なのです。

 

深煎りが63℃なのは恐らく220℃以上高温で焙煎(拙著『サラームカフィの焙煎マニュアル』をご参照ください)するため脂肪酸エステルが熱分解してしまうのでその他の物質による乳化に頼らざるをえないためでしょう。たとえば僅かに残ったタンパク質の乳化力は60℃が最高でありそれ以上だと固まってしまい、さらにデンプンは60℃以上だとダマになりやすいので粉の中のお湯が60℃程度が油が全体に回る程度の深煎りには最良だと考えられます。

(メラノイジンやペプチドや多糖類にも乳化力があるようですが資料が見つかりませんでした)

 

また、浅煎りの場合余計な酸味や渋みを抑えるのに高温が向きます、これはおそらく余計な酸味などをタンパク質と一緒に結合させられるからでしょう、もちろん抽出方法により温度は変わりドイツの硬水と細かく引いたドイツの焙煎でするメリタ式抽出は90℃前後の高温が良いようです、最適な湯温は経験的に63、64℃いや83℃だと昔から議論されていたのは合理的な理由があったのです。









・乳化

 

焙煎した珈琲にはメラノイジンやエステル類、タンパク質などの天然の乳化剤が含まれており、それが泡で汚れが落ちるように粉から珈琲の成分をお湯に溶かし、油溶性の香り成分が溶け込んで香油のようになっている珈琲の油分を乳化(油と水のような混ざらない物質が細かくなって混じる現象)します、この油の粒であるミセルの粒度が細かいと舌触りとコク、が強くなるのです。

 

つまり、珈琲とはある意味、マヨネーズやカルボナーラのソースと同じエマルション(乳化して水と油が混ざりあった物質)であるわけです、なじめない考えかもしれませんが蒸気圧で乳化させているエスプレッソの泡の層(クレマ)のあの濃厚な味を想像していただければご理解いただけるでしょう(工場で生産される珈琲飲料は超音波乳化機などを使い乳化を行っています)

 

また乳化には酸味や雑味を抑える効果もあり美味しい淹れ方をした珈琲は舌に触る嫌な感じがまったく無く、まったりとしたコクととろみのある舌触りとなり、香油が乳化で細かくなり表面積が大きくなるため珈琲の返り香After tasteがふわっと喉の奥から立ち広がります(逆に強すぎると上立ち香aromaが弱くなります)ただし乳化が起こるにはいくつかの条件が必要です。

 

珈琲を淹れる時、乳化成分と豆のなかの二酸化炭素が泡を作り出して粉の表面を覆うわけですが、乳化を急速に起こすには一度限界ミセル濃度いう表面張力の臨界点のような濃度に達する必要があります、これが一度に大量に淹れると美味しい理由の一つでしょう、体積は3乗で増えても表面積は2乗でしか増えないからです、ここで注目していただきたいのは伝統的な浸漬法で使う器が縦長、もしくは上に向かってすぼまっている形状をしているAことです

エチオピアの珈琲ポットであるジャバナ、トルコのジェズべ、アラブ世界のダラーDallah などを検索して見てください。  

 

実際にお手元の水面の面積が3倍以上違う縦長と横長の陶器の器に珈琲粉と熱湯を入れかき混ぜて数分置いてから飲んでみて下さい、縦長の容器のほうがまろやかで香りが良く感じるはずです、これは水面が小さいことが要因だと考えられます、つまり先人たちは経験から縦長の容器を使い、乳化力のある泡と油を小さい水面に集めて飽和させ限界ミセル濃度を作り出して珈琲オイルを乳化していたのです、また、恐らく一度に大量に作った珈琲にとろみがあり味が良くなるのもその為でしょう。






もちろん、限界ミセル濃度は水温、pH、水の硬度、数種類の界面活性物質の相互作用などに影響を受けるため非常に複雑ですが 、基本的に浸漬式抽出法では水面は小さい方が良く、透過式では細く一つの穴から落ちるのが良いと覚えておいてください、これは表面積の影響で実は一般的なペーパーフィルターでもこの要素は大切で珈琲が穴から落ちるとき、界面活性物質が細い液柱や小さな雫の中で限界濃度を超えるのです。

 

ただし落ちる距離が短いと乳化が弱いようで、カップに直接フィルターにのせた場合とサーバーに抽出した時の味はかなり変わります(ワインのデキャンタージュと同じで空気と混ざって二酸化炭素と酸素が混ざったことも珈琲の香りに良い影響を与えているはずです)高すぎるとなぜか味は悪くなりますのでフィルターを手で持ち上げて高さを見極めてみてください、個人的に10センチ程度あれば良いと思います。

 

そしてネルドリップなどでおこるのが布乳化(私の造語)です、一般的に膜乳化と呼ばれる方法に似ていて、珈琲を吸水性のある布目に通して乳化を行います、布目を油が通る時、布に吸着して濃縮された界面活性成分が臨界ミセル濃度を作り出して乳化が起こります。

つまりネルドリップではある程度使い込んだフィルターのほうが美味しいというのはこの布乳化によると思われます(珈琲飲料の生産現場でもネルを使い時には抽出液を10枚以上のネルに通します)ネル特有のコクととろみのあるまろやかな味は実はミセルの舌触りが生み出すのです。

 

もちろんコクだけが美味しさではないので良く乳化している=美味しいというわけではないですが、美味しい珈琲は乳化の原料を持っているのです、珈琲には見た目だけで乳化具合が分かる方法があります、一つは泡の立ち具合です、ちゃんと焙煎によって成分が変化してなおかつ新鮮な豆でないと泡は立ちませんしかも普通の泡と違いカップに長く残り、黒真珠のように綺麗です

(しつこいようですが泡が多い=美味しいでもありません)

 

次に珈琲の水面の光の反射です、良く乳化している珈琲は端の部分がまるで日食のようにに光って水面が膨らんだように見えます、これは珈琲が膨らんでいるのではなく普段は側面が盛り上がって(物理的に言うと『濡れて』)凹型になっている水面の表面張力が界面活性成分で弱くなると端の方が重力で沈み込み、凸型になっているのです、アミノ酸により日本酒や紅茶でも同じ現象が起きますが(酒が膨らむ、ゴールデンリングと呼ばれるようです)この現象をメニスカスといいます(計量器具のメスシリンダーで液体を見るときは必ず真横から見ろ、というアレです)






そのため十分に乳化した珈琲は黒漆のように品のある輝きを見せます。

私はこれをシルバーリング(私の造語)と呼んで抽出の指標にしています

 

カップの淵が沈んで光が輪のように反射している

 

さらに、珈琲を抽出している時にちゃんと乳化ができていると水面に珈琲の雫が弾けて一瞬水面を転がるときがあります、これは乳化成分の疎水基という水を弾く部分が水面を覆い、そこにまた疎水基に覆われた雫が落ちると液体と液体の間に隙間ができてしばらく混ざり合わないためで、長いと10秒以上水滴が消えず浮かび続けます。

 

美味しい豆を適切に淹れると、水面を琥珀のような雫が走り回り、珈琲の表面に黒いビロードのような品が出てカップの縁に銀色の環が輝き、乳化が加水分解を阻害するのか淹れてから長時間味が変わらず飲み終わったカップが次の日も香るのです、そして牛乳も砂糖もいらず、混ぜものをするとかえって味が落ちるほどです。

 

・浸透圧

 

 次に浸透圧ですが、 これは2つの溶液が膜を挟んで隣り合ったときに同じ濃度になろうと働く圧力です、つまりお湯が珈琲粉に触れた時お湯に珈琲の成分が染み出してくるあの現象です。

一般に透過法(粉にお湯を通す方式)の珈琲のほうが浸漬法(シンセキ式、珈琲業界ではシンシと読む、粉をお湯に漬ける方式)より味が濃いと言われるのも、何も溶けていないお湯が抽出中粉に接し続けて浸透圧が粉から味を引き出し続けるためです。





一投ごとにお湯がどの程度の成分量を粉から溶かし出すか、この浸透圧を意識しながらお湯をかけていくのが透過式の肝です、逆に理論的には浸漬式では常に粉が高濃度の抽出液に浸り続けるためエグ味は出にくいわけですが、実際は浸漬式でもエグ味を強く感じるときが多くあります。

 

これはトルコ珈琲では珈琲粉が細かすぎるためで、フレンチプレスでは浸漬時間が4分と長すぎるためですが(金属フィルターの金気も理由です)そもそもトルコ珈琲で粉が細いのはフィルターがないので上澄みを飲むため粉が細かくないと沈まないからであり、フレンチプレスは金網のメッシュの細かさに限度があるのでそれより大きい粉でなければならず、さらにかき混ぜないため味が出にくいので4分も浸けて置かなけれならないのです、そのように様々な制約から粒度や浸漬時間が決まってるので、純粋な味の追求だけでレシピができているのではないのです。

 

ちなみにサイフォンなども煮立てて曇点も超えてしまうと輝きがなくベタッとした水面になります(もちろん浸漬式だから不味いというわけではなく、強い香りを楽しむなど透過式とは違う良さがあります)浸漬式の肝は挽目と時間のバランスで、そのバランスを制限しているのはフィルターの目の細かさです、食品用のネル生地もしくは晒し布(縦横20番手程度)を使って濾せば挽目を気にする必要はなく、浸漬時間も1分から1分半ですみます。

 

このように透過式と浸漬式両方に影響がある要素が湯量と粉の粒度です、湯量で浸透圧を、粒度では抽出効率を操作しますが抽出器具に合わせた操作が必要です、例えば同じ台形一つ穴のペーパーフィルターでも三洋産業スリーフォードリッパーとメリタ式では全く違い、三洋産業では一杯のときは中挽き粉12g抽出量150ml蒸らしのあと3、4投に分けて抽出しますがメリタ式はカット式グラインダーで挽いた日本人の感覚では極細挽きの粉をつかい蒸らし後たった一投で8gから125mlを抽出します、半分浸漬式ですが極細挽きなのでご家庭でも簡単、効率的に抽出できるわけです、しかしドイツでは成分が出にくい硬水であり豆の質が良いのでこのような抽出が可能なのであり、日本の軟水では余計な成分まで抽出してしまいます。

 

そこで三洋産業スリーフォードリッパーでは蒸らしのあとに3-4投にわけて美味しいところだけを搾り取るわけです、ネル(フランネル製フィルター)を使う場合はお湯の量を細く一定に注ぎ続けるのが大切です、入れる湯量と抽出される量が一定なら側面からシャバシャバ漏れなくてすみ、何回もお湯を止めずとも効率的に成分を抽出できるわけです、もちろん一回ごとにつきっきりになりますのでペーパーフィルターのように一人で何種類の注文をこなすことはできませんが少量のデミタスや逆に大型のものを使い一度に大量に作るのに適しています。





珈琲は一度にたくさん作ると浸透圧の関係でまずい成分が抽出されにくく乳化もよく起こるので味がよくなり抽出失敗も減ります、適切に冷ませば長時間美味しさがもちます(氷で80℃台からの急冷は成分の粒子が大きくなり舌触りが悪くなります)そのためネルとホーロー容器に大量に淹れて手鍋で温めたり、とても濃く少量を淹れてお湯で割ったりする店もあります。

 

一度に10杯以上大量に作るのには粉の粒度を粗くすると抽出に時間をかけても雑味が出にくいのでおすすめです、抽出に時間がかかり湯温は下がってしまいますが、深煎り豆を粗挽きしてネルで大量に落とす昔ながらの抽出方法はすべての条件が噛み合い理にかなっているわけです。

 

以上のように珈琲の抽出はお湯の質と乳化の制御と浸透圧の制御によっていかに美味しい成分だけを搾り取る工程を設計するかが大切なのです。



 2 豆の扱い

 

・買った珈琲の保存

 

匂いのない容器、パッキン付きホーロー製がベストで次点でガラス製のものがおすすめです

ご家庭では匂いのない瓶やジップロックを二重にして海苔などに入っている乾燥剤を入れて涼しい日の当たらないところに保存してください、常温で焙煎1週間以内にできる限り早く飲むのが理想ですが、2ハゼ以前の豆を夏に一週間以上保存するような場合は冷凍がオススメです、ただし結露すると味が悪くなるので素早く取り出してください、冷蔵保存は他のものの匂いが移りやすく

おすすめしません。

 

・豆を挽く

 

 珈琲を粉砕するミル・グラインダーは大きく分けてグラインド臼式(粉砕機で言うところのピンミル?)とカット式(フラット式ともいう)に分かれていて、その他に工場用のローラーミル、エスプレッソグラインダーによく採用されているコニカル式がありますが粒度が揃い味に影響を与える微粉(細かすぎる粉、雑味のもと)が少ないのが良いミルの第一条件です。

微粉や渋皮(豆の内側の薄い皮、銀皮とも言う)をどう考えるのかも重要で静電気でミルにくっつくのである程度除去されますが、金ふるいなどで除去するのも良いですし粗挽きなら手動空気ポンプなどで渋皮を吹き飛ばしやすいです。




豆を挽くときはまずスイッチを入れて(本体のスイッチが一番壊れやすいのでコンセントの先にスイッチ付きの珈琲粉が入らないホコリ防止延長コードをつけてオンオフすると良いです)

最高回転速度にしてからシャッターを開けて豆を投入します、これをしないと低速で投入された豆の粒度がばらついてしまいます、また、同じ挽き目でも深煎りのほうがもろいためより細かくなるので注意が必要です。またミルのタイプと抽出法には相性があり、一般に日本の透過式にはグラインド臼式が、ヨーロッパの家庭で主流のメリタ式にはカット式がいいといわれています、またグラインド臼式は粉が歯につまりづらく味が安定し、カット式は詰まりやすいが微粉が多いが味の個性が強いと言われます。

 

やはり家庭用におすすめは毎日飲むなら電動です、

手動ミルでも雰囲気がありますが安くて小さいプロペラ式のミルでも持ち上げて上下にふるうとある程度まで細かく挽けますので(保証対象外ですが)一番安いプロペラ式を買うか、3年で使い捨てにするつもりで1万5千円以上のものを買うか、10年使うつもりで思い切って寿命の長いグラインド臼式の業務用小型ミル(R220みるっこ)を買うと良いと思います(中古価格も安定しています)5000円ほどの中途半端な性能の修理費の方が高いようなものを買うよりは、普段はプロペラミル、時間があるときはプロペラミルで挽いたものをさらにもう一度手挽きするというように2つ買って使い分けたほうが良いでしょう。

 

 3 茶器と金属イオン

 

 珈琲の茶器は水や抽出法に比べてほとんど注目されない要素ですが実は味にかなりの影

を与えている水と並ぶ重要要素です、唇に合う薄口のカップを選ぶのはもちろんのこと一番大切なのは茶器の釉薬の成分です、前述のように例えば湯沸かし道具のステンレスから溶出した金属イオンと、イオン化傾向の異なる釉薬に使われた金属が弱酸性の珈琲を電解質として電子を出す、つまり、小学校の理科実験のレモン電池(ボルタ電池)と同じ事が起こっているのです

 

この放出される電子も金属イオンとともに味を悪くしているわけです、また縁取り、内外の絵付けや名入れに使われる釉薬も影響があり、そこに触れた水滴が内側についただけでも味に影響があります、そのため珈琲を作る際はお湯も抽出器具も茶器も金属イオン「金っ気」を、特に異なる金属イオンが合わさるのを徹底的に避けなければいけないのです。







これは中国茶の世界で白磁白磁青磁青磁と「茶器の材質を合わせる」のと同じことです、中国人は非常に繊細に味にこだわるので、土物茶器の素材ですら一種類の陶土から作ったものが最上としています、例えばコーラでも缶より瓶のほうが美味しいのですから金属イオンには特に注意してください。

 

個人的には金属では銅、アルミ、錫は非常に悪影響がありチタンは味を重くします、クロムとニッケルの含有量の多いステンレスは影響が少なく、プラチナも影響が少ないです、銀は非常に影響が少ないですがやや辛口になるように思います、特筆すべきは「金」で実は金もほんのわずかにイオンを放出するので味に影響があり、ボディというか舌触りを強くします、これはおそらく金と硫黄による増感sensitizationが原因と考えられます、増感とはフィルム写真の感度(弱い光でもはっきり映る性能)を上げる現象ですが、珈琲液は珈琲現像といって現像液の代用(お茶も代用になる)に使えるくらいですからおそらく金イオンが増感核になって成分の粒子を大きくしているのでしょう。

 

また、個人的な好みもありますが珈琲カップ還元焼成(磁器)より酸化焼成(陶器、ボーンチャイナ、ニューボン)が味がまろやかに感じます、恐らく酸化皮膜が表面にできているからでしょう、ただし釉薬の色により味は様々です、これは色を金属で作っているからです、とくに濃い色の釉薬や複数の色で内側に絵付けされているものや縁取りがある茶器は避けるべきです。

 

また、陶器フィルター、ポットやカップは見た目が似ていても同じ材質、同じメーカーの同じブランドでできる限り揃えるべきです、おすすめは口当たりの薄い、縁取りや絵付けがされていないボーンチャイナ製のカップです、これは恐らくボーンチャイナ釉薬から溶出したリン酸三カルシウムなどのイオンが珈琲液の表面張力を少し弱くするため軟水のような柔らかい舌触りになるのが原因でしょう、上質なボーンチャイナは入れた瞬間に水の味がまろやかになります。

 

酸化焼成の白い磁器や白いボーンチャイナは見た目も見た目がよく釉薬の味が良い意味で渋いのでイタリアンローストや日本の深煎りと相性が良いです。

カップとしてボーンチャイナは旨味とコクが強くなり白磁は苦味と砂糖牛乳を入れた時の相性がよくニューボンは酸化型の磁器であり、白磁と同じく釉薬の中に泡があり表面積が多いのでそのぶん香りがよく引き立ちます(ただし牛乳は臭みが出るので向かない)このように一長一短があるので珈琲に合わせてカップの種類を変えると良いでしょう






私は珈琲カップにはノリタケかナルミ、ニッコーのカップを使っています、ちなみにクリーム色のファインボーンチャイナでも美味しいのですが器の味が強すぎるように感じます、そして業務用につかわれる強化磁器はアルミナを含むため香りを楽しむ飲料と相性が悪いです、また理由は不明ですが紙コップの内側の防水面に触れると珈琲の香りは消えるので試飲にはデミタスカップが良いと思います。



ガラス

 

 次にガラスの茶器についてですが、実はガラスの種類、メーカーの違いによる水、珈琲、お茶に対する影響は陶磁器よりも大きいのです、一般的なガラス(ソーダガラス)の材料はケイ素、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムです、安いガラスは炭酸カルシウム(チョークの主成分)でかさ増しされているので安いガラスコップを使うのは石膏のコップで飲み物を飲むのと同じことなのでとても渋い味がします。

 

その他にもクリスタルガラス、バリウムクリスタル、ほかには色ガラスにするためにも様々な金属が使われており、それぞれ金属イオンが溶出しており水を入れても全く違う味がします、クリスタルガラスは甘味、バリウムは渋苦い味がしますが無害でクリスタルガラスには表面に非常に細かい凹凸があるので表面積を増やし香りを良くする効果があると言われています、そのためバリウムクリスタルはアイスカフェオレに、クリスタルガラスは香りの弱いものに向きます。

 

耐熱ガラスはホウケイ酸ガラスというホウ酸をいれたガラスですがソーダガラスよりも味の影響は少ないです、ただし、やはり水や珈琲をいれると味に影響があるので注意しましょう、個人的には酸味と重さを感じます。

 

またメーカーによりガ耐熱ガラスも全く成分が違い、メーカーによってはガラスに青みや緑色が出るほど他の金属を入れている物もあり珈琲お茶の味と香りを完全に壊してしまうものも有ります、国内外のメーカーをいろいろ試しましたが珈琲用には国産のハリオガラスがおすすめです(ハリオは酸味を強めます)

 

ですが水用コップの材質、水差しの材質、クリーマーの材質も全て口の中の珈琲の味に影響を与える事を覚えておいてください、使う場合は同じ種類、同じ会社の1材質に限ります。





気をつけないと水コップは渋い味でアルミのヤカンから水を注ぎ、真鍮や洋白のクリーマーをつける、というようなことにもなりかねません、またヨーロッパ製のグラスで全面強化ガラスで熱湯OKをうたうものもありますが、全面強化ガラスは傷があると急に爆発することがあるのでお湯にしろ水にしろ業務用にはおすすめしません、水やアイスコーヒー用の強化ガラスコップは安全な国産のアデリアガラスか佐々木東洋ガラスをおすすめします。

 

ガラスで一番金属イオンの溶出が少ないのは石英ガラスです、非常に高価ですが味にほとんど影響がなく耐熱温度は1000℃もあり直火も急冷もでき、熱伝導が悪いという特徴があります。

またシリカにも乳化剤に使われるくらい表面張力を弱める効果があるので水を入れるとイオンが溶出して軟水のような舌触りになります、実用的ではありませんが個人的にはこれで電子レンジなどをつかい沸かしたお湯はとても良い味がすると思います、ですが石英ガラスにもケイ酸カルシウムの汚れがついてしまい取れないという大問題があります。

 

湯沸かしはともかく珈琲サーバーには珈琲カップと同じブランドの同じ材質のコーヒーポットかマグカップ、特に形状は乳化を促進するために縦長で水面が小さいものがオススメです。



スプーン

 

 珈琲スプーン(ティースプーンより小さいのが珈琲スプーンです)はステンレス製が一般的です、裏を見ると書いてありますがクロムとニッケルの含有量によって下から18-8、18ー18、20-20ステンレスと等級が有ります、最低でも18-8ステンレスを使いましょう、しかし珈琲を飲むときはたとえ高級ステンレスを使おうとチタンスプーンを使おうと金気の影響は避けられないので、カップと同じメーカーの白磁ボーンチャイナ製スプーンか銀メッキスプーンをおすすめしますが、そもそもお客様が砂糖や牛乳をいれて飲まれるならそちらの味の影響のほうが大きいので業務用にはステンレスで大丈夫です、もちろん理想を言えば木製竹製の方も味は良いですがウレタン塗装は傷がつきやすいです。










 4 食べ合わせ

 

 珈琲には食べ合わせの悪いものが沢山あります、多くは香り成分と反応してしまうか還元してしまうものです、例えば酸化防止剤のはいっているほとんどのワイン、農薬代わりに硫化銅が使われるオーガニックワイン有機砂糖などの食品、蒸留器に銅器が使われるウィスキー、ラム、ブランデーなどの蒸留酒泡盛などステンレス蒸留器をつかうものは問題なし)洋酒入りのお菓子、銅を多く含有する食材例えば銅の器で煮詰めるメープルシロップや銅釜で練った小豆餡、銅板で焼いたパンケーキ、ウィスキー樽で熟成させるタバスコ、レバー、イカ、タコ、甲殻類、貝類、ゴマ、ナッツ、大豆、カカオなどです。

 

意外なものでは給湯器を通した水やお湯、シャワーでのうがい、紙コップの内側の塗装です、

なぜ悪影響があるかは不明ですが珈琲やお茶の味も香りも温かいものでは特に落ちます、その為テイクアウト用紙コップの内側をお湯ですすぐ店もあります。

またもっとも気づきにくいのは飴や清涼飲料、ペットボトル茶、ジュース、菓子、ジャムなど殆どの加工食品に入っている還元型ビタミンCやクエン酸などの抗酸化剤や酸味料、そして同じく強い抗酸化力を持つクローブやシナモン、カルダモンといった一部のスパイスでこれらのものが口に入ると酸化によって生じる香りに対して影響があります、味見をする際は半日は控えましょう。

 

・茶器の洗い方

 

 店の大きさによっては不可能ですが茶器はできれば手で洗います、これは食器洗い機は研磨剤を含んだ洗剤を使うため表面に傷をつくるのと温水を作るときに銅パイプを使うものがあるからです、同じ理由でメラミンスポンジも塩、重曹、クレンザーも禁止です。細かい傷がつくと茶渋がつきやすくなり、雑菌も増えやすく、陶磁器やガラスの光沢も失われてしまいます、できればスポンジで手洗いして無香料洗剤で洗い、塩素やカルキなどのミネラルが残らないように軟水ですすぎます、カルキ対策には定期的に茶器の表面をお酢とキッチンペーパーでパックしてから拭いてください、茶渋は酸素系漂白剤でとり普段のスポンジと分けた漂白剤専用のスポンジを作り残らないようにしっかり洗います(酸素系漂白剤は皮膚が溶けるので素手で使わないようにしてください)また、クエン酸や塩素系漂白剤は茶器の表面に残りやすく微量でも味を破壊するので使わないほうが良いでしょう。

 

また裏面に印字してあるブランド名の釉薬に触れた金属イオンを含んだ水滴が容器の内側に残ると味に悪影響を与えるので注意してください。




5 浅煎り浸漬式珈琲一考

 

 様々な悪影響のある入れ方要素を述べてきましたが個々の要素が全部が全部悪いわけではありません、例えば銅もウィスキーの蒸留器として使われる時にもろみの臭みを取るように焙煎豆の臭みを弱めてくれます、手鍋で焼いた品質の悪い生臭いナチュラル製法の豆を煮込んで飲むしかなかった時代の珈琲器具が真鍮や銅でできているのは偶然ではないでしょう、つまりは全体的な道具立て、提供までの工程設計こそが大切なのです。

 

昔のコーヒーには昔の、現代のコーヒーには現代の存在理由があります、たとえばアメリカの浅煎りコーヒー文化はどうやら独立後お茶がイギリスから入ってこなくなった際に代用品として一部のエチオピア豆などの紅茶香のするものを薄く淹れて飲んでいたことに由来するようです、たしかに浅煎りでそういう香りのする豆がたまにあります。

 

当時はろくに道具もない時代に珈琲を美味しくつくるにはフライパンで焼いた豆をズタ袋に入れて石でくだいてヤカンで大量に煮立てるしかなかったでしょうから、香りが消えないように浅く煎って(外は焦げて中は浅煎り)クロロゲン酸で腹を壊さないように薄く煮立てて加水分解とともにエステル化も多少起こしてなんとか紅茶風に飲めるようにしていたのでしょう、

 

これがいわゆるカーボーイコーヒーですが(何故か浅煎りはペーパーフィルターでは詰まりやすく落ちるのに時間がかかるのでハンドドリップにはあまり向かない)このような起源を持つアメリカンロースト(北欧やオーストラリアの焙煎も)はもともと日本式のフィルター向けではなく浸漬式抽出用の焙煎であるのです、昔アメリカでパーコレーターが好まれたり現在は大型のフィルターマシンで淹れて加温しながら保存するのもそのためでしょう。

 

ちなみにカウボーイコーヒーのレシピとしてはアメリカのミディアムローストの粗挽きの粉1gに対してアメリカの水12gで沸騰前のお湯に粉を入れて混ぜてからから吹きこぼれないように3〜4分グツグツ煮立たせて最後に少し水を入れて粉を沈めて1分まってから上積みを飲みます、 うまく入れるコツは縦長のキャンプケトルでいっぺんに10杯分以上大量に作ることです。 

 

私は個人的に浅煎り珈琲は胃腸にきついので一度透過法であれ浸漬式であれ抽出したものを再加熱して飲んでいます。 






6 私の珈琲の淹れ方

 

 以下に私の珈琲の淹れ方をご紹介します、もちろんこれが完璧だとか、一番美味しいとか言う気は毛頭ありません、ただ病的に私の好みの味を目指しただけです。

 

まずは水の準備です、以下のような面倒なことをしなくともご家庭では日本産の軟水ペットボトル入りのミネラルウォーターで十分でアルカリイオン水は除く、海外ではVolvicが良い)業務用なら水道水を蛇口直結式の逆浸透膜浄水器に通した軟水が理想です、イオン交換樹脂フィルター付きなら完璧です、シンク下に設置するタイプではない理由は蛇口を通る時のステンレスとサビの金気がジャマだからです、そしてできる限りくみたての水を使います、汲み置きするときはペットボトルなど可塑剤臭が少ない容器を使いイオンの溶出する無機物で出来た容器は避けます、

 

家庭用蛇口直結式浄水器とポット型浄水器を2つ組み合わせて使うのも良いでしょう、しかし、この方法の問題はイオン交換樹脂フィルターなしだと浄水器のフィルターに水道水中の金属がだんだんと蓄積され水としては美味しくとも珈琲の香りが損なわれてしまうことです、飲んで美味しい水と珈琲用の水は異なるのです。

一般の家庭用浄水器も同じ問題があるので想定寿命よりも早くカートリッジを交換してください、このような理由から水道水が一番良いという店もあるのでしょう。

 

またあくまでご家庭用ですがイオン交換樹脂は簡単にネットで買えるので家庭用に軟水器を自作することもできます「イオン交換樹脂 軟水器 自作」で検索してみてください、イオン交換樹脂は安い精製塩で再生して数百回使えるのでこの方法なら非常に安くすみます、ホースニップルをフィルターハウジングという容器につけると便利です、ただし重要なのは必ず食品添加物グレードのイオン交換樹脂を使うことと、イオン交換樹脂からはアミン臭という生臭さと細かいゴミがでるので塩素と金属イオンを抜いた水をもう一度中空糸膜フィルターや食品添加物グレードの活性炭もしくはポット型家庭用浄水器に通してください、もっと簡単にイオン交換樹脂を不織布などの袋に入れてポット型浄水器のフィルターの上においても効果ありです、ただしいずれにせよカビなどの衛生面によく気をつけてください、生水で飲んではいけません、必ず完全に沸騰させてください。








もちろん豆が上質でちゃんと焙煎されている前提ですが、イタリア式焙煎や深煎り向けにどうしても硬水を使いたい場合は一度軟水を作りそこにミネラル分を付加してカスタムウォーターを作ります、中心は炭酸カルシウムをつかい、塩化ナトリウムは乳化を阻害することもあるのでごく微量で構いません、塩化マグネシウムも単体では味が強すぎるので天然ニガリを使います。

水1Lに対し炭酸カルシウム0.1グラムとニガリを1滴入れると丁度いいように思います、ペリエの成分表を参考にするといいでしょう、実際ペリエを使うとアロマとテイスト(上立ち香と含み香)が良いです。細かく書いてきましたが銅が入っていなければ日本の水道水や軟水のミネラルウォーターで十二分に美味しくできます。

 

次に湯沸かしの道具ですが前述の通り中まで白い野田ホーローの鍋を使いガス火で温めるか電気ケトル、特に国産の余計な機能のついていない(水をアルカリ性にするとか保温とか銀イオン添加とか)単純なものをつかいます、電気ケトルの理想は1パッキン付き密閉式でフタが外せること2総ステンレスでないこと3できる限り使い込んだもの、この3点が重要です。

 

1は早く沸かせて空気の漏れない密閉式のほうがお湯の二酸化炭素が抜けにくいためであり、必ず蓋を外す理由は蓋の中にお湯を通すと蓋の可塑剤の匂いが水につくためです。

2は総ステンレス製は流石に金気が強すぎるからです。

3は本体の可塑剤臭をできる限り薄くするためです、また本当は全面フッ素加工されたのものもいいのですが可塑剤の匂いが独特でまた昨今(2021年)は欧米でもフッ素樹脂の規制が激しくなりあまり印象が良くないので使いません。

 

新品の電気湯沸かし器を買ったら先ずは養壺(ヤンフー、中国茶の世界で土物の茶器の下準備)と同じことをします、やり方はいろいろですが、食用の炭酸カルシウムか飲用の硬水を使いお湯を沸かし一晩置く、これを繰り返しステンレスの電熱部に薄いカルシウムの被膜を作ります、こうすると金属イオンの溶出は少なくなります、ステンレスポットを何十年も使い込んで鍾乳洞のようになっている珈琲専門店をたまに見かけますが狙いは同じでしょう。

 

また、絶対にクエン酸洗浄剤を使って器具を洗ってはいけません、クエン酸が少しでも残ると珈琲やお茶の香りを還元して破壊してしまいます、基本的に何もせずそのまま使い続けてください、ただし特に軟水が使えない場合はカルシウムと一緒に銅などの相性の悪いミネラルが堆積して味が落ちることがあるのでその場合は酢を使い拭き掃除をしてください。






湯沸かしの方法は世界最古の茶の本である「茶経」に従います、茶経では三沸と呼び、水の沸騰を一沸、二沸、三沸と三種類に分けています、底に魚の眼のような気泡が見えわずかに音がする一沸、泡が鎖のように連なって湧き出る二沸、水面がグラグラ波打つ三沸、として三沸以上沸かすと「水が老いて飲用に適さない」としています。

 

これは非常に理にかなっていて前述の通り沸かしすぎたお湯は酸素も二酸化炭素も抜けてしまいアルカリ性の渋い湯になってしまうからです、しっかりとパッキン付きの蓋で空気が抜けないように密閉した電気ケトルで三沸の直前を狙うのが一番美味しいお湯です、そして最後に一部の名店でされているように1、2回高いところからポットなどに注いでワインのデキャンタージュの要領で二酸化炭素を含ませましょう、ちなみにこの方法は 紅茶や緑茶にも有効です。 

 

お湯を注ぐ道具は必要な場合はできる限り細くも注げる、つる首が太いかそもそもないものが最上です、一番いいのはカップと同じメーカーの同じ素材の水差しか、ミルクピッチャー、ティーポットです、私はボーンチャイナティーポットを使っています、ご家庭用ではアベコベですが小型のハリオ製珈琲サーバーも意外と注ぎやすくオススメです。

 

珈琲受け(サーバー)はお湯を注ぐ道具と茶器と同じ材質の物がベストですが前述の通り耐熱ガラスやホーロー製も良いと思います、もしも再加熱する場合は泡立たない程度にして下さい。

前述の通り浅煎り90℃以上普通83℃油でテカテカの深煎り63℃程度が適温です。

 

お湯のかけ方は抽出法はフィルターメーカー推奨の方法で構いません(三洋産業の場合は4回に分けて「の」の時に注ぐ)ただしお湯はくみたて、沸かしたてこれが鉄則です、また、1,2回お湯を他の容器に少し高い位置からから注いで空気を含ませることで二酸化炭素を含ませてお湯の味とpHを変えることができます、温度も下がるので一石二鳥です。

 

またお湯は使う前に必ず赤外線放射温度計を使って触らずに温度を測りましょう、直接淹れる物理式のものはガラスやステンレスの金属イオンが溶出してしまいます、ただし放射温度計は表面の温度を測るだけなので普通の温度計で表面と水中の温度を容器ごとに校正して使いましょう、大体3-5℃差があります。








フィルター扇形一つ穴のものが使い勝手が良いです、すぐに100回ほどの練習で誰でもできるようになります、扇形一つ穴は味を効率よく上手く焙煎できていない豆には向きませんが扇形1つ穴は浸漬法と透過法のいいとこ取りをしているため誰でも円錐型より効率よく抽出ができ、一杯出しから複数杯淹れまで対応できますが円錐形フィルターやネルではどうやっても横から抽出液が漏れるためつきっきりで注意して少しずつ注がないと薄くなってしまい特に1杯出しは難しいです。

 

私見ですが円錐型は珈琲から全部の味というより一部の美味しいところのみを取り出すのに向いているように思います、台形一つ穴フィルターではドイツのメリタ式か三洋産業のスリーフォードリッパーがよいですがどちらにしろフィルターの素材は陶磁器より樹脂のほうが成型がしっかりしてリブも深いので蒸らしのガス抜きがしっかりできてオススメです、陶磁器製を使う場合はカップ釉薬と同じ種類で統一しましょう。

 

メリタ式はペーパーフィルターがボール紙の箱に直接詰められてドイツから送られてくるのでどうしても紙が匂いを吸って臭くなっています、その場合無臭の容器に入れて暫く置くか活性炭などと一緒に密閉しておき匂いを取りましょう、三洋産業製ペーパーフィルターは国内生産なので匂いも無く品質は最高です。紙は酸素漂白の白色を選んでください、またフィルターの紙臭さが気になる場合は先にお湯をかけるのも一つの方法ですが、そもそも質の良い白いペーパーフィルターを適切に保存して使えばしなくとも問題はありません。

 

ペーパーフィルターは端を持ったときにへの字状にへなっとする内側に向かって底部を折ります、(このときメーカーにより接着してある部分の上3-5ミリを一緒に折り込みます)そして台形では側部を底部の反対側の方向、つまり外側に折ります、このようにペーパーフィルターの内と外を意識しないとフィルターとの間に隙間ができてしまいます、うまく折れるとプラスチック製フィルターでは斜めにしても紙が落ちてこないほどぴっちりとはまります。

 

紙は匂いが付きやすいので一度に大量に折ってアイスクリームコーンのように重ねて臭いのない蓋付きのガラス容器などにしまっておきましょう、消臭用に活性炭も一緒にいれれば完璧です。

円錐形のフィルターにも内と外があり外側に折ります、また折り方はメーカーや装着する方向により様々なので使用するフィルターに合わせて調整してください。

 

挽いた粉を縦長下がすぼんだの受け缶(ステンレスかガラスか陶磁器)にため、細かく縦横に振ります、すると微粉と渋皮は「ブラジリアンナッツ効果」という現象で小さな微粉は下に沈み




大きい粒が上にあるのでそれをフィルターの下に入れられるわけです、こうすればフィルターに粉を注ぐ時に下から大きい粒が、その上に小さい粒がのるのでちょうど野球のグラウンドのように水が詰まらずスッと抜けます(もちろん均一に混ざっている粉と優劣があるわけではなく好みの問題です)ですがあまり粉を平らにするためにトントン叩きすぎると粉が詰まりお湯がペーパーフィルターの横から溢れてしまうので気をつけてください、また、お湯を染み込みやすくする為に中央にスプーンなどで少しくぼみをつけても良いでしょう。

 

軽い渋皮は挽いた直後になぜか上に浮かぶので渋皮が気になるならハンドブロアーで吹き飛ばすか静電気の出る布などで除去しますどうしても粉の大きさを揃えたい場合はフルイにかけて大きさを揃えてください、フルイはメッシュ単位で種類があります。

 

粉の量はケチってはだめで1杯で12グラム以上(メリタ式8g)で濃ければお湯で割ります、

1−2杯なら三洋産業が、3杯以上ならメリタがおすすめで、大量に作れば作るほど抽出効率が良くなり粉の量は少なくてすみます。

 

コツとしてはお湯をかける時はまずお湯を細く、できる限り低くそっと乗せるように(泡が細かくなります)ピンポン玉くらいの面積の円を書くように蒸らし(最初に30秒ー1分ほどかけて粉にお湯を染み込ませふくらませること)それをを1回目として計4回ほどに分けて注ぎます、一投ごとに湯量を少なくしながらできる限り細かい泡を作りながら粉を限界まで膨らまし切ります。

なれないうちはキッチンタイマーを使い全体の時間を調整しましょう、また水の粘度は温度が高くなるにつれて低く、つまり柔らかくなるのでそのことも考慮してください。

 

新鮮な豆は二酸化炭素ガスが多孔質構造から出てきて泡立ちながら膨らみます、ただし泡が出れば美味しいとは限らず深煎りで2週間以上寝かせた物を使うときは二酸化炭素が抜けておりあまり泡は出ません。

 

また、フチにお湯をかけると薄い珈琲になってしまうので気をつけてください、目標は膨れた粉がハンバーグのようになってその上に半熟卵のような泡が乗っかっている状態です、お湯を粉すれすれに低く、細く注ぐと泡が細かくなりしっかり乳化が進みます。

 

台形では粉はうまく抽出できると終了後ベッコリと粉が沈みきれいなくぼみになります、そして最後の方は薄い出がらしの液が入らないように途中で切り上げます。





なれない場合は細いお箸を使います、箸を一本持ちお湯を注ぐポットを反対の手に持ち、箸にそわせて注ぐと的確な位置に片手ではありえないほど細く注げますし、特別な道具や練習も必要ありません、ヤカンでもできるのでキャンプのときにもおすすめです。

 

ネルの味を出したいならサラームカフィ式二段乳化法をつかいますこれはネルの乳化力をペーパーフィルターでも利用する方法で、簡単に言うと台形一つ穴のフィルターを円錐形のフィルターを載せ(ガタつく場合は少し削ったり加工します)円錐型の方の穴に、ホーロー鍋などで煮込んでノリ落としをした8センチ角のネル布を入れこみ、そこに珈琲液が落ちるようにします。

こうすることで乳化物質がネルにたまり乳化が起こります、これがペーパーフィルターの手軽さとネルの乳化力を併せ持つサラームカフィ式二段乳化法です。



ネルを縫わずに切るだけで済むのでネル布を使い捨てでき(何回か使い込んだほうがコクがでます、保存する場合は水につけて冷蔵、洗ってまたはそのまま冷凍)保存の手間もいらず、なおかつ衛生的です、この方法は業務用大型コーヒーマシンでも使えます、その場合は大きめのネル布を使うか縫ってあるネルフィルターを使ったほうが良いでしょう。

 

ちなみにネルは起毛してある面(両面起毛もある、起毛してあると成分が詰まりやすい)を外にするとスッキリとした味になります、珈琲用ネルの種類は綿100%、綿混紡、片面起毛、両面起毛、平織り、綾織、厚手薄手など様々な種類があります、また代わりに出汁こし用の晒布(さらしぬの)を使うのもあっさりした味になるので良いです、和晒(わざらしはネルと違いノリ取りの手間もなくお湯をかけて乾かすだけで良いので安いので使い捨てにぴったりです、




種類は目の細かい30番手の「特岡」規格がおすすめです。またネルも晒布も2重、3重にできます、さらに味は多少劣りますがフェルトタイプの食品用キッチンペーパーも同じように使えます、ただし珈琲フィルター用ではないのでお湯をかけて紙臭さを取ると良いでしょう。

 

さらに乳化させたいならサラームカフィ式お茶パックデミタスです。

これは綿の不織布製のお茶パックをぐらつかせないように裏返しにして粉を24gいれてメリタの1×1フィルターなどの小型の台形フィルターに載せます、そしてお箸抽出で少しずつ二段乳化法を使いネルで乳化して抽出していきます、そして30ml~60ml抽出したら何も入れずに舐めるように味わいます。







昔からある方法を改良したサラームカフィ式浸漬法も負けていません、これは上部がすぼまった形をしている下の方に注ぎ口のあるコーヒーポットやティーポット、急須、土瓶などの容器を使います(個人的には泡も入れたいのでコーヒーサーバーやコニカルビーカー、トールビーカーを使っています)沸かしたお湯を入れ水温が80℃くらいになったらあとから粉を入れ(これも水面で乳化をさせるため)木や竹のスプーンでかき混ぜます、この時ぐるぐる回すのではなく珈琲サイフォンのようにヒラヒラとジグザグに押したり挽いたりして泡をつぶすように撹拌します、

 

ペーパードリップなど透過法では泡は味が悪いので入れませんが逆にトルココーヒーのように浸漬式では香油の溶け込んだ泡はコーヒーの顔といわれるのです

 

表面が泡で覆われて粉がお湯に馴染んだら粉の投入から45秒たったらもう一度同じ要領でかき混ぜます、このとき泡を非常に細かくする=良く乳化させることを意識してください、目安はスプーンについていた1回目の撹拌のときのコーヒーの粉が2回目の撹拌のとき泡の洗浄力で綺麗に取れるぐらいです。

そして15秒まって晒し布やネルフィルターや円錐形ペーパーフィルターなどで少し高いところからまず泡を弾けさせながら落としてフィルターに成分を吸わせます、これは泡が弾ける時の衝撃と泡の中の乳化成分を放出させることで乳化を進めるためで、同じようにチャッカマンなどで浸漬中の水面の泡を炙るのも泡が弾けて良いです。

そして最後に乳化成分を含んだフィルターに残りの抽出液も落とします、このサラームカフィ式浸漬法は豆の個性が(欠点も含め)強烈に出ます。

 

またホーロポットを温めて粉を入れ、沸かしたての高温のお湯をいれて、あとから水を少量いれるという大昔の抽出もなかなかです、これは19世紀にバーンズ焙煎機やローラーミルを発明して現代の珈琲機器の原型を作った米国のジェイベズ・バーンズ氏がすすめていた抽出法でサラームカフィ式浸漬法はこれを改良したものです。

 

このように高温で抽出してから水を加えるという方法はコーヒービギン用に18世紀から知られており、珈琲抽出液が高温になった場合も小さじほんのひとさじの常温の水をいれると味が良くなります、仮説ですがこれは粉が沈ませる効果(原理は不明)と水面の乳化成分が転送温度という乳化しやすい温度帯になるためではないかと考えています、このとき炭酸水を入れても酸味のある面白い味になります、またサーバー内の抽出液をスプーンで混ぜてもさらに乳化しますが、乳化させすぎると上立ち香が薄くなるので程々にしましょう。





浸漬法用容器の素材はボーンチャイナ白磁、白いホーロー、信頼できるメーカーの耐熱ガラス製がオススメです、また、このポットを使う方法自体はエチオピアジャバナに見られるようにかなり古くからあるようですし、いまはお湯をかける道具になっているコーヒーポットのあの特徴的な形も珈琲を煮立ててすぼまった上部で乳化させ、浮かんだ粉と沈んだ微粉を避けて液体だけをくむための形だったのです。

 

その後お湯をかける道具と抽出したものを入れてそそぐ道具にコーヒーポットは別れていくわけですが、珈琲は水面の面積が小さい方が美味しくなるという経験則は忘れられてもデザインは残りティーポットより縦長のものを今でもコーヒーポットと称するわけです、かつてココアポットという同じ設計思想のココア用の器具もありました、いまでもティーカップより縦長のカップをコーヒーカップというのも同じような理由でしょう。

 

現在は条件に合う形状のポットはなかなかないもので、ヤカンのようにつる首の本の部分に整流板というか茶こし穴というかなにか穴開きの板が付いており一度にドバっとお湯が出ないようになっているものが大半です、その部分の清掃が大変なのでご家庭ではマグカップやホーローの小鍋、コーヒーサーバーなどで代用するのが良いと思います。

 

ペーパーフィルターでも簡単にメールの味に近づける方法があります、それがフィルターの下側面に数ミリの切り込みをハサミで入れるサラームカフィ式切れ込み抽出法です、こうすれば珈琲の香油を通常のペーパーフィルターよりも多く抽出することができます。

 

注意点としては微粉が落ちることもあるので下ではなく底辺から2cmほど上の側面に左右水平に1 、2 mm切れ込みを入れてください、特に円錐形のペーパーフィルターではサラームカフィ式浸漬法で珈琲を濾すときに詰まりやすいのでこの方法がおすすめです

 

また、何枚か重ねて切ればいっぺんに何枚も処理できて便利です、ペーパーフィルターの種類によって様々な切れ込みの入れ方があると思うので研究してみてください。

 

サラームカフィ式切れ込み抽出法は香油が多く抽出でき、なおかつ微粉が流出しても布で取れる二段乳化法と相性がとても良いです。







・砂糖と牛乳

 

イオン交換樹脂を使い精製された現代の白いグラニュー糖は味をあまり変えませんのでコーヒーに入れても美味しくいただけますが、有機砂糖が一番コクが有ります、ただしメーカーごとにかなり味に差があり土壌のミネラル分を多く含んでいるため香りに影響が出ます、また私の推測ですがオーガニック作物に許可されている硫酸銅ボルドー液)が土壌にのこって有機ワインとおなじように味に影響を与えているのかもしれません、ちなみにあまり精製されていない有機砂糖は常温保存中にもメイラード反応で味が変わります。

 

牛乳とクリームの乳脂肪分は砂糖以上に好みが別れますが普通の牛乳でも生クリームや無糖練乳エバミルクを加えてお好みに調整できます、また牛乳のほぼ全てはホモ牛乳(超音波乳化済み牛乳)なので脂は乳化されていますが、やはりだんだん上の部分に脂が浮かんで来るので上澄みのほうが味が濃いです。

 

また牛乳の味は牛の食欲により季節差があり夏は薄く冬は濃くなります。

 

エスプレッソマシンの蒸気でつくるフォームミルクは銅イオン入りの水が入りやすいので注意して下さい、規模の小さい店なら昔ながらのシャコシャコ上下に動かす手動式ミルクフォーマーでもいいですし、モーター式のミルクフォーマーとホーロー製の小さいミルクパンやバターウォーマーを使い温めながら泡立てるほうが簡単で濃厚にできます(乳化成分が泡と一緒に水面に集まるようにミルクピッチャーのように上がすぼまっている形状が良いです)

 

また牛乳はタンパク質が凝固する50ー60℃程度が粘度がありよく泡立ちます、しかし70℃になると臭みが出るので加熱は程々にしましょう、逆に15℃以下でも容器の形状(トールビーカーかコニカルビーカーがベスト)と量次第では泡立つのでアイスコーヒーなどに乗せても美味しいです、ただし低脂肪牛乳を使うと非常に味が悪いのでフォームミルクにはしない方が良いです。

 

私は100mlか200mlの小さいハリオ製のトールビーカーを使い電子レンジで温めてダイソーの電動ミルクフォーマーをつかっています、さらにスチームマシンに味を寄せたい場合は軟水を少し入れればきめ細やかでシルキーなフォームミルクになります。







・アイスコーヒー

 

アイスコーヒーは透過浸漬双方で水出し、氷出し、急冷と様々な種類があります。

それぞれ良いところがありますが、最近は高温からゆっくり冷ました時に起こるクリームダウンという白濁現象を防ぐために氷に注ぐ急冷式をする店が多いです、個人的には80°c台のお湯で抽出した急冷アイスコーヒーは成分の粒が大きくなるのかすこし舌触りが悪く感じるのでアイスカフェオレにするのがおすすめです。

 

私の好みは先に粉をお湯で蒸らして氷どけ水をポタポタと垂らして長時間抽出したアイスコーヒーが好みですが、業務用に大量に作る場合は極深煎の豆をつかい、できる限り大量に珈琲サーバーに60数℃の低温のお湯を使い水を少し入れたサーバーに落として粗熱が取れるまで冷ましてから冷蔵庫で保存するのはいかがでしょうか?またアイスコーヒーは抽出温度が殺菌できないほど低温なのでホット以上に衛生管理に注意します、味よりも衛生が大切なので容器はステンレスサーバーでも良いでしょう。

 

浸漬法で作る場合はプラスチック製容器か白い釉薬のホーローなどの寸胴に氷水(溶けだした水は0℃で安定している)とともに粉を入れて一晩寝かせて、もう一つの寸胴に一遍にネルやサラシなどで濾していれます、この場合の流派は二つあり、よく混ぜたほうが良いという人と水の上に粉をおいてそのままかき混ぜない方がいいという人がいます。

 

ちなみにアイスコーヒーを飲む際は氷を入れると比重の関係で水が上に浮かぶのでストローを使うかよくかき混ぜてからでないと美味しく飲めません。

 

・スパイスコーヒー

 

個人的には珈琲に合うスパイスはホールの黒胡椒やオールスパイスとブラウンカルダモンだと思いますこの3つはほんの少しで十分香りをつけることができて牛乳や砂糖との相性も良いです、例えばクセの少ないMCTオイルのような油に漬けて香りを移しても面白いですし(ただしMCTオイルは加熱厳禁)ギーやバターで炒め香りを立たせたり牛乳で煮込んだり、それこそ手鍋で乾煎りしたりしてから珈琲と合わせるのも楽しいでしょう。

 

以上が私の珈琲の淹れ方です。





7 おすすめ器具

 

・フィルター

 三洋産業 AS樹脂スリーフォードリッパー  フラワードリッパー

 メリタ  クリアコーヒーフィルターシリーズ 

 

・ペーパーフィルター

三洋産業株式会社   美味しい珈琲屋のコーヒーフィルター

           アバカコーヒーフィルター

 

カフェグッズ株式会

コットンパワーフィルター

 

メリタ        オリジナルナチュラルホワイト

 

・ネル生地

 丸太衣料株式会社 吉田織物株式会社 など、特に綿ポリ混紡

・さらし

 吉田織物株式会社 吉田晒 特岡晒

 

・お茶パック 

 協和紙工株式会社 お茶パックコットン

 

洗剤 旭化成 フロッシュパフュームフリー

 

酸素系漂白剤 地の塩社 酸素系漂白剤



8 後書き

 

 最後までご拝読いただき有難うございました、誤字や間違いや至らぬ点など多々あると思いますが、本書が皆様の珈琲作りの一助になれば幸いです。

 

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